この仕事に人生を賭けてます! 伊能忠敬の「人生二山」が好きな言葉。 実り豊かな第二幕目の人生の歩みing型。 黒田真一が人生の旅人として日々の雑感を綴ります。
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8月1日の新聞の<担当記者がお薦め・夏休み 環境考える本>
(毎日新聞)という記事に乗り、お盆休みの後半、その1冊に目
を通してみた。
■ギャリー・マーヴィン著/南部 成美訳
『オオカミ 迫害から復権へ』白水社
上記は白水社のHPから引いてみたが、この本の内容は、この
HPの解説文で、まずご理解いただくことにする。
それにしても、日本でオオカミが絶滅したのが明治38年(19
05年)というが、それまでの日本では農作物に被害を及ぼす
イノシシやシカ、サルを捕食したり追い払ってくれる田畑の
守り神のような存在がオオカミだったらしい。
牧畜業が盛んな諸外国と異なり、日本では家畜をめぐっての人
間とオオカミとの激越な対立関係は生じなかったゆえだ。
しかし、明治期以降の近代化や都市化の進行の中で、状況は変わり
オオカミへの視点は大きく変化した。オオカミ駆除の方向へと一足
飛びの転換期を迎えた。
西欧でのオオカミへ込めたイメージ「強欲で狡猾で極めて残忍な
もの」、古くからの童話『赤ずきん』やら近代に入ってからも映
画『狼男』などで繰り返し刷り込まれたオオカミ=負のイメージと
いうものが、今を生きる我々日本人にも強化され植えつけられて
いる。
この本では、生態学的側面、そして文化史的側面まで網羅的に
紹介されているが、イギリスの社会人類学者という著者の博識は
留まるところを知らず縦横無尽、知的好奇心を刺激される好著と
なっている。
訳者も日本オオカミ協会会員で東京農工大農学研究科修了の研究者
ということもあって、一気に読ませる名訳で成功本の貢献大だ。
当方も山歩きをした時期があり、日光国立公園のニッコウキスゲ
に和んだ鮮明な記憶があるのだが、今やその群落もシカの食害で
風前の灯という。たしかに中禅寺湖の外輪山あたりを逍遥すると、
あたり一面シカの糞が覆い腰を下ろせないほどだから、シカの個
体数増加は目を覆うばかりで、まさにシカによる自然破壊の現状
は由々しき事態と言っていい。
この大きな要因と言われているのが、生態系ピラミッドの頂点に
君臨すべき二次消費者の肉食動物の「不在」ということになる。
そう、日本では100年前に絶滅してしまったニホンオオカミ
がいないことが、一次消費者(植食動物)であるシカの爆発的増加を
もたらしたという。(増加の要因には、他に日本における狩猟者
人口の高齢化などによる減少、地球温暖化による雪害の減少も
ある。)
そのような中、コウノトリの復活やトキの復活のように、オオカミ
を日本の山野に再導入し、生態系ピラミッドの頂点捕食者の復活
を目指す試みが出てきた。
日本オオカミ協会の設立、民間エコロジー運動との連動を企図し
広く国民に訴え世論形成を目指す活動という。
■丸山直樹・須田知樹・小金澤正昭編著
『オオカミを放つ 森・動物・人のよい関係を求めて』白水社
この本も合わせて読んでみたのだが、東京農工大、宇都宮大、
立正大などの研究者の生態系崩壊とオオカミ絶滅の連関のメカニズム
の考察やら、尾瀬にまでシカ出現の地道なフィールド調査やら、オ
オカミの糞分析による食性やら、連携するポーランドの研究者との
ポーランド現地調査の報告やら、連携するモンゴル人研究者による
モンゴルのオオカミ関係史などなど多岐にわたる研究のレポート
は有益だった。
この本は、誰でもが知りたい「オオカミは人を襲うのか?」で一つの
章を割いているが、ここの章の分担執筆者・桑原康生氏は、近著
『オオカミの謎:オオカミ復活で、生態系は変わる!?』を出している。
上記協会員のひとりではあるが、厳密な研究者ではなく、北海道で
のオオカミの飼育者であるらしい。
この桑原氏の近著をアマゾンのHPで開いてみると、ページの下部に
ひとりだけ「カスタマーレビュー」を書いている人がいて、氏の
著書に辛辣な長文の書評を書いているのにぶつかる。
インターネットにも、日本オオカミ協会にこれまた辛辣な反対表明
のブログを書いているのにも出くわすのだが、農産物への深刻な
被害をもたらしているシカ、イノシシ、サル、なかでもシカの及ぼす
それは、もはや農産物に留まらず、日本の植物相への深刻な打撃、
生態系の復元力不可能な恐れのレベルさえ予測させるまでの未曾有
の危険性をはらんでいる。
だがしかし、シカ害が如何に深刻な事態であろうとも、日本では
オオカミの再導入を図るというのは、短絡的に過ぎ、日本では
無理なのではないか。それが、わずか2冊の本を読んだだけなの
だが、読後の結論だ。
欧米などでは、古くは伝説的な人食いオオカミの話が多く残っている
らしいのだが、それは、オオカミではなくて<オオカミ犬>だったので
はないかという。(上記:桑原氏) オオカミ犬とは、オオカミとイヌと
の交雑個体で、オオカミの血とイヌの血の割合が微妙で、性格的に
デリケートで扱いが難しいという。よって、飼い主に捨てられ野生に
なることが多く、結果手の付けられない伝説的悪性種が生まれた可能
性があるという。
また、人を襲うオオカミは狂犬病に罹っていることが多く、よって
人に害を及ぼす事件は、こういうオオカミだったというのだ。
まともな健康オオカミは、本来、人を恐れ人には近づかないものと
いう。これは、モンゴルでも同様で、近くにオオカミが見えてもモンゴル
人は恐れたり、慌てたりしないという。
ところが、「健康なオオカミは人を襲わない。」が定説のところ、
1990年の半ば過ぎ以降、カナダではこの健康なオオカミが人を
襲う事故が相次いで起こったという。
種明かしを書けば、西欧でもモンゴルでも牧畜が主要な生業となって
いたようなところでは、オオカミが近づけば、家畜に被害が出る恐れ
があったから、人は殺さない時でも、癇癪なき仕打ちでオオカミを
追い払った。
いつでもそうであったから、オオカミは習慣的に人は恐ろしいもの
と学習したのだ。人が傍からみれば何気に慌てる様子もないと見える
平然とした感じは、あくまで人とオオカミとの安全距離以上の間が
あったから平然としていられた訳で、「人は恐ろしいもの」と思う
からオオカミはそれだけの距離を保った。
それが現代では、自然保護思想や動物愛護精神の浸透で、キャンプな
どで遭遇したオオカミにも人は優しくなった。
よって、「オオカミの人馴れ」が昂進し、怖がらずに人のすぐ近く
まで寄る個体が生まれた。ヘマをすれば、ペットまがいに餌やりまで
する人間が現れ、被害者となった。
知床でヒグマ見たさに仕切りを越えたり、日光のサルに軽い気持ち
で餌やりをした結果が、土産物店から菓子折りを強奪したり観光客
の荷物を脅し取る不埒なサルを作ってしまった。
「かわいい!」「かわいい!」の連発で、語彙失語症の日本人。
後先考えず能天気な我が国の楽天マインドは、全国津々浦々に
ユルキャラブームを生んだ。
『エサは与えないでください!』の看板なんて、じィー読めない
わけでもないはずなのに、まるで守れない我が国民だからして、
「日本の自然にオオカミを導入」なんて、無理だと思う。
まちがいなく「人食いオオカミ」を生んでしまうことになる。
●人気ブログランキング へ
ランキングに参加中、よろしくお願いいたします。
一般社団法人日本オオカミ協会のHPをみると、タレントの武田
鉄矢氏だの櫻井よしこ氏と対談などと。大相撲の横綱白鵬を
モンゴルオオカミだかの連想からか?引っ張り出すとか何とか・・・。
政治的にいえば、ポピュリズム姿勢がヤラシイな。
有名人攻勢ってか。
一旦オオカミを野に放ってしまったら、間違いがあったら
取り返しがつかないことになる。
地味でも、石橋を叩くような真剣な姿勢こそ望まれると思う。
■ヴェルナー・フロイント著『オオカミと生きる』白水社
地道にオオカミを知るため、今度はこれを読むつもり。
(毎日新聞)という記事に乗り、お盆休みの後半、その1冊に目
を通してみた。
■ギャリー・マーヴィン著/南部 成美訳
『オオカミ 迫害から復権へ』白水社
上記は白水社のHPから引いてみたが、この本の内容は、この
HPの解説文で、まずご理解いただくことにする。
それにしても、日本でオオカミが絶滅したのが明治38年(19
05年)というが、それまでの日本では農作物に被害を及ぼす
イノシシやシカ、サルを捕食したり追い払ってくれる田畑の
守り神のような存在がオオカミだったらしい。
牧畜業が盛んな諸外国と異なり、日本では家畜をめぐっての人
間とオオカミとの激越な対立関係は生じなかったゆえだ。
しかし、明治期以降の近代化や都市化の進行の中で、状況は変わり
オオカミへの視点は大きく変化した。オオカミ駆除の方向へと一足
飛びの転換期を迎えた。
西欧でのオオカミへ込めたイメージ「強欲で狡猾で極めて残忍な
もの」、古くからの童話『赤ずきん』やら近代に入ってからも映
画『狼男』などで繰り返し刷り込まれたオオカミ=負のイメージと
いうものが、今を生きる我々日本人にも強化され植えつけられて
いる。
この本では、生態学的側面、そして文化史的側面まで網羅的に
紹介されているが、イギリスの社会人類学者という著者の博識は
留まるところを知らず縦横無尽、知的好奇心を刺激される好著と
なっている。
訳者も日本オオカミ協会会員で東京農工大農学研究科修了の研究者
ということもあって、一気に読ませる名訳で成功本の貢献大だ。
当方も山歩きをした時期があり、日光国立公園のニッコウキスゲ
に和んだ鮮明な記憶があるのだが、今やその群落もシカの食害で
風前の灯という。たしかに中禅寺湖の外輪山あたりを逍遥すると、
あたり一面シカの糞が覆い腰を下ろせないほどだから、シカの個
体数増加は目を覆うばかりで、まさにシカによる自然破壊の現状
は由々しき事態と言っていい。
この大きな要因と言われているのが、生態系ピラミッドの頂点に
君臨すべき二次消費者の肉食動物の「不在」ということになる。
そう、日本では100年前に絶滅してしまったニホンオオカミ
がいないことが、一次消費者(植食動物)であるシカの爆発的増加を
もたらしたという。(増加の要因には、他に日本における狩猟者
人口の高齢化などによる減少、地球温暖化による雪害の減少も
ある。)
そのような中、コウノトリの復活やトキの復活のように、オオカミ
を日本の山野に再導入し、生態系ピラミッドの頂点捕食者の復活
を目指す試みが出てきた。
日本オオカミ協会の設立、民間エコロジー運動との連動を企図し
広く国民に訴え世論形成を目指す活動という。
■丸山直樹・須田知樹・小金澤正昭編著
『オオカミを放つ 森・動物・人のよい関係を求めて』白水社
この本も合わせて読んでみたのだが、東京農工大、宇都宮大、
立正大などの研究者の生態系崩壊とオオカミ絶滅の連関のメカニズム
の考察やら、尾瀬にまでシカ出現の地道なフィールド調査やら、オ
オカミの糞分析による食性やら、連携するポーランドの研究者との
ポーランド現地調査の報告やら、連携するモンゴル人研究者による
モンゴルのオオカミ関係史などなど多岐にわたる研究のレポート
は有益だった。
この本は、誰でもが知りたい「オオカミは人を襲うのか?」で一つの
章を割いているが、ここの章の分担執筆者・桑原康生氏は、近著
『オオカミの謎:オオカミ復活で、生態系は変わる!?』を出している。
上記協会員のひとりではあるが、厳密な研究者ではなく、北海道で
のオオカミの飼育者であるらしい。
この桑原氏の近著をアマゾンのHPで開いてみると、ページの下部に
ひとりだけ「カスタマーレビュー」を書いている人がいて、氏の
著書に辛辣な長文の書評を書いているのにぶつかる。
インターネットにも、日本オオカミ協会にこれまた辛辣な反対表明
のブログを書いているのにも出くわすのだが、農産物への深刻な
被害をもたらしているシカ、イノシシ、サル、なかでもシカの及ぼす
それは、もはや農産物に留まらず、日本の植物相への深刻な打撃、
生態系の復元力不可能な恐れのレベルさえ予測させるまでの未曾有
の危険性をはらんでいる。
だがしかし、シカ害が如何に深刻な事態であろうとも、日本では
オオカミの再導入を図るというのは、短絡的に過ぎ、日本では
無理なのではないか。それが、わずか2冊の本を読んだだけなの
だが、読後の結論だ。
欧米などでは、古くは伝説的な人食いオオカミの話が多く残っている
らしいのだが、それは、オオカミではなくて<オオカミ犬>だったので
はないかという。(上記:桑原氏) オオカミ犬とは、オオカミとイヌと
の交雑個体で、オオカミの血とイヌの血の割合が微妙で、性格的に
デリケートで扱いが難しいという。よって、飼い主に捨てられ野生に
なることが多く、結果手の付けられない伝説的悪性種が生まれた可能
性があるという。
また、人を襲うオオカミは狂犬病に罹っていることが多く、よって
人に害を及ぼす事件は、こういうオオカミだったというのだ。
まともな健康オオカミは、本来、人を恐れ人には近づかないものと
いう。これは、モンゴルでも同様で、近くにオオカミが見えてもモンゴル
人は恐れたり、慌てたりしないという。
ところが、「健康なオオカミは人を襲わない。」が定説のところ、
1990年の半ば過ぎ以降、カナダではこの健康なオオカミが人を
襲う事故が相次いで起こったという。
種明かしを書けば、西欧でもモンゴルでも牧畜が主要な生業となって
いたようなところでは、オオカミが近づけば、家畜に被害が出る恐れ
があったから、人は殺さない時でも、癇癪なき仕打ちでオオカミを
追い払った。
いつでもそうであったから、オオカミは習慣的に人は恐ろしいもの
と学習したのだ。人が傍からみれば何気に慌てる様子もないと見える
平然とした感じは、あくまで人とオオカミとの安全距離以上の間が
あったから平然としていられた訳で、「人は恐ろしいもの」と思う
からオオカミはそれだけの距離を保った。
それが現代では、自然保護思想や動物愛護精神の浸透で、キャンプな
どで遭遇したオオカミにも人は優しくなった。
よって、「オオカミの人馴れ」が昂進し、怖がらずに人のすぐ近く
まで寄る個体が生まれた。ヘマをすれば、ペットまがいに餌やりまで
する人間が現れ、被害者となった。
知床でヒグマ見たさに仕切りを越えたり、日光のサルに軽い気持ち
で餌やりをした結果が、土産物店から菓子折りを強奪したり観光客
の荷物を脅し取る不埒なサルを作ってしまった。
「かわいい!」「かわいい!」の連発で、語彙失語症の日本人。
後先考えず能天気な我が国の楽天マインドは、全国津々浦々に
ユルキャラブームを生んだ。
『エサは与えないでください!』の看板なんて、じィー読めない
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「日本の自然にオオカミを導入」なんて、無理だと思う。
まちがいなく「人食いオオカミ」を生んでしまうことになる。
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鉄矢氏だの櫻井よしこ氏と対談などと。大相撲の横綱白鵬を
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政治的にいえば、ポピュリズム姿勢がヤラシイな。
有名人攻勢ってか。
一旦オオカミを野に放ってしまったら、間違いがあったら
取り返しがつかないことになる。
地味でも、石橋を叩くような真剣な姿勢こそ望まれると思う。
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HN:
5596DA(ゴーゴークロダの意)
性別:
男性
職業:
行政書士
趣味:
山歩き、自然散策、ドライブ
自己紹介:
ISO14001環境マネジメントシステム審査員補
日本自然保護協会・自然観察指導員
浄化槽管理士
日本森林学会会員
福祉住環境コーディネーター
茨城県介護サービス情報公表制度・調査員
茨城県動物愛護推進員
上記もろもろ、兼 おっさん。
日本自然保護協会・自然観察指導員
浄化槽管理士
日本森林学会会員
福祉住環境コーディネーター
茨城県介護サービス情報公表制度・調査員
茨城県動物愛護推進員
上記もろもろ、兼 おっさん。
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