「献体」

昨日だったか、団地の隣組の班長さんが訪ねて来て、一年ほど前ま
で住人だったお年寄りの死を告げた。


葬式は故人の遺志で、行わないこと。またご自分の遺体は、郷里の
県立医大に献体するとのこと。この２つが伝達されました。


同じ団地の住人として、それはあまりにアッケラカンとした、「人の
死」の処理の仕方としては事務的過ぎる告知で、少し驚きました。

しかし、何とまあ＜潔い処し方＞かと、感心する部分もありましたね。




死んでしまったら、人間だって虫けらだって同じこと。
葬式やら何やら結局周りに＜迷惑＞かけてしまう訳だし、それよりか、
自分がいなくなった後も、世界は当たり前に、何にも無かったかのよ
うに、自然に過ぎて行くだけ・・・・、を思い知ること。



子どもさんのお宅に引き取られる前の頃は、丁度ご本人が班長さんで
団地の雑務をこなしてられましたが、ヨタヨタと今にも倒れそうな
歩き方でした。
内心「もう、長くはないな・・・。」と思いましたが、その一方では、
先々のこともキッパリと考えられていたことを知りまして、今さら人
を見直した次第。



でも、医科大学への「献体」はちょっと自分では気が進みませんな。

昔、北杜夫の＜どくとるマンボウ＞シリーズのどの本かで読んだこ
とが記憶の底に残っていましてね。
彼は、東北大学医学部を出ているのですが、ヤル気のない医学生で
授業はサボり気味。解剖実習でもお線香を焚いた後、いよいよ解剖
に入るのですが、誰もが希望する腹部など早々とパスして、競争率
の皆無な、「手の部分」だったか貰うのね・・・・。

それを、自分は如何にダメ医学生だったか！？＜どくとるマンボウ＞
に面白おかしく書いていました。


当方も若い頃読みましたから、その時は面白かったわけですが、
オヨヨ、自分が献体する年代に近くなりましたらね、今だって
こんなアホ学生が大勢いるでしょ！？

好奇の眼で５、６人の学生が見下ろす中、真っ裸で、○ンポだって
隠せない・・・・・、ヤ～～～ン、書いてるだけで辛アァァーー、
こんな＜献体＞出来ますか？？？



全国組織では、「白梅会」という献体希望者の集まりがあるようで
すが、こういう組織では生前から、献体の意義から処置のされ方、
悩みの解消までサポートしてくれるようですが。

それにしたって、不埒な医学生に自分の献体がブチ当たる可能性は
ゼロじゃないもんね。


かつてのご近所さんが、そこまで調べた結果なのか、ただただ「建前」
の崇高な理念に惹かれてのことだったのか？
それは解からずじまいですが、「葬式なし、遺体は献体。」その
シンプルな娑婆とのお別れの仕方に、グッと来たのも確かでしたね。




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